対数関数

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指数関数の記事が不遇

前回の記事で指数関数や対数関数の理解には微分が必要みたいなことを書いたが、実は対数についてはそうとは言えない。というのも対数は科学の歴史上大変重要なものだったからだ。指数関数には悪いことをしてしまった。しかし残念ながら今から説明するのは対数についてなので悪しからず。

対数の導入

今はコンピュータが大変発達したので人間の計算の手間はかなり省けた。四則演算なんて1秒もかからず計算出来てしまうだろう。まあ今でも人の手で計算しなければならないところはあるが、昔は四則演算ですら手計算が必要だった。その他の複雑な計算の上に、膨大な桁の四則演算なんてしていたらどこかで計算間違いはするだろうし、あらかたの計算を終えた後に計算間違いに気づいたときには精神的にかなり辛かっただろう。

そんな状況で計算の大変な乗算や除算をしていたら計算だけで科学者は一生を終えてしまう。昔の科学者はなんとか掛け算割り算を足し算引き算に変換できないかを考えた。そこで目をつけたのが指数法則である。指数法則では数の積が指数の和になっていたり、商が差になっていたりしたがそのままでは使えない。数と指数の関係を逆にできれば目的は達成される。 \begin{align} \underbrace{a^p\times a^q}_{数の積}=\underbrace{a^{p+q}}_{指数の和}\\ \underbrace{\frac{a^p}{a^q}}_{数の商}=\underbrace{a^{p-q}}_{指数の差} \end{align} 関係を逆にするには逆の操作を作れば良い。これを対数と呼び、 $$ a^p=A \iff p=\log_aA \tag{*} $$ $\iff$は同値といい、その両辺で意味が同じということである。上式のとき、$p$ を対数、$a$ を、$A$ を真数という。またこの定義から$A\gt0$でなくてはならないことがわかる。これを真数条件と呼ぶ。忘れると時折痛い目にあったり、誤った結論に至るので気をつけよう。

対数の性質

対数の性質はその定義から指数の逆である。数の積は指数の和であったので、対数では真数の積が対数の和となる。 $$ \log_aAB=\log_aA+\log_aB \tag{1} $$ 差と商も同じで、 $$ \log_a\frac{A}{B}=\log_aA-\log_aB \tag{2} $$ この(1)と(2)の性質によって積や商を和、差に変換できる。有効に活用するため、予めたくさんの値の対数を計算しておきそれを対数表としてまとめた。これにより圧倒的に計算量も減り科学者の胃も健康を保てたというわけだ。この対数の発見により天文学者の寿命が数十年伸びたなんて言われたりもしたらしい。

対数表を作るのにはかなり苦労しただろうが、対数の持つある性質から殆どの数は計算しなくて良いのである。指数法則の1つに $(a^p)^q=a^{pq}$というものがあっただsろう。これに対応する対数の性質を用いるのである。$\log_aA$という数があったとしよう。この値を別の文字 $t$ と置こう。これを次のように計算していく。 \begin{align} \log_aA&=t\\ A&=a^t\\ A^k&=a^{kt}\\ \log_aA^k&=kt\\ \log_aA^k&=k\log_aA\tag{3} \end{align} $k$ は任意の実数である。これにより既知の対数から未知の対数を計算することが可能となった。

対数の定義を見ればわかるように、底の値が変わればまた違うものとなってくる。そのためせっかく計算した対数も底が違うと使えない。そこで底を変換する公式を考えよう。$a\neq1$として、 \begin{align} t&=\log_ab\\ a^t&=b\\ \log_ca^t&=\log_cb\\ t\log_ca&=\log_cb\\ \log_ab\log_ca&=\log_cb\\ \log_ab&=\frac{\log_cb}{\log_ca} \tag{4} \end{align} これで底が異なる対数の値を計算することが可能となった。

また(*)の定義から、 \begin{align} \log_aa=1 \tag{3}\\ \log_a1=0\tag{4} \end{align} も成り立つ。

先程も少し出てきたが、対数表を作るにあたって何かしらの底を定めてやる必要がある。扱いやすい底は2つあり、10と前回出てきた自然対数の底$e$である。10を底とするような対数を科学の有効数字の表記法が $\times10^n$ であることから常用対数と呼び、後者は明らかかもしれないが自然対数と呼ぶ。対数は歴史的な意味は計算の易化だっただろうが、実験データが倍々になっていくような場合には対数グラフを用いたほうが見通しが良くなったり、pHで使われたりするので今でも重要な概念である。