べき関数

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有理関数

多項式関数の記事の中で文字変数を分母に含むような式は多項式に分類されないことを書いた。そして分母に文字変数を含むような式のことを有理式と言い、これを含む関数のことを有理関数と呼ぶ。例えば、 (1)f(x)=2xx21 のような関数である。この式には明記していないが、定義域は分母が0でない範囲である。(1)の場合はx1,1で定義された関数である。もちろん分母の形によっては実数全体で定義されるときもある。有理関数を考えるときにはその定義される範囲に注意しよう。

分子の次数下げ

さて、有理関数は扱いやすいだろうか? まあ計算はできるが分子分母両方に文字を含むと計算しにくいし、分母の次数が大きいのもまた計算の気が失せる。これらを解決する方法を2つほど紹介しよう。

1つ目は分子の次数が分母よりも大きいときに使えるものである。通常の整数の割り算を例に考えてみよう。整数の割り算、abで割ることの定義は、商q、あまりrとすると、 (2)a=bq+r 0r<b という形に一意に書けることである。b0であるので(2)の両辺をbで割ってみよう。すると、 (3)ab=q+rb

このことを多項式に拡張しよう。どういうわけか多項式の割り算という言い方はあまりしなくて、整式の割り算という場合が多いのでこの節では多項式のことを整式と呼ぶことにする。特に違いはないが、整数との対応として整式の方がしっくりくるのでこちらでいく。整式A(x)を整式B(x)で割ったときの商をQ(x)、あまりをR(x)とすると、整数の割り算からの拡張で、 (4)A(x)=B(x)Q(x)+R(x)Q(x)R(x)が一意に定まるということになるのは明白だろう。ただしB(x)の次数はA(x)の次数以下であるとする。では整数の場合にさりげなくついていたあまりの条件0r<bは整式の場合はどう拡張すればよいだろうか。まず、整式同士を掛け合わせた場合その次数はどうなるだろうか。元の整式より下がることはないのはわかるだろう。次数は同じかそれ以上になる。(4)の右辺にはB(x)Q(x)との積があるのでB(x)の次数によるが、Q(x)の次数は高々A(x)の次数と同じだろう。ではR(x)はどうだろうか。ポイントは(4)の形に一意に書ける、という点である。仮にR(x)の次数がB(x)以上だったとしよう。このときR(x)を変形してB(x)を作り出すことができる。

例を見てみよう。x3+3xx1を使ってみる、 (5)x3+3x=(x1)(x2+1)+x2+2x+1 もしこの形にしか書けない場合はQ(x)R(x)が定まったということになる。ところで、 (6)x2+2x+1=(x1)(x+3)+4 と書けることから、 x3+3x=(x1)(x2+1)+(x1)(x+3)+4(7)=(x1)(x2+x+3)+4 とできる。このようにあくまで一例ではあるが、もしR(x)の次数がB(x)の次数よりも大きかったら変形で新しいQ(x)R(x)を作り出せてしまう。これでは一意に定まることに反する。従ってR(x)の次数は0以上B(x)の次数未満としなくてはならないのである。

これで(4)の形に一意に表すことができたので、(4)の両辺をB(x)で割ってみよう。すると、 (7)A(x)B(x)=Q(x)+R(x)B(x) 先に書いたようにR(x)の次数はB(x)のものよりも小さいので、これでめでたく分子の次数を下げることができた。

部分分数分解

整式の割り算を用いることで分子の次数を下げることができることはわかった。しかしあまりの条件を見ると、分母の次数が2以上だと分子の次数は必ずしも0にはならないこともわかるだろう。やはり次数は小さい方が計算は容易いし、性質もわかりやすい。そのため今度は分母の次数を下げる方法を見ていこう。残念ながらこちらもある程度の条件が必要である。一つが分母が実数の範囲で因数分解ができる必要がある。そしてその分解のされ方で、最終的に分子分母の両方に文字が残ってしまうこともある。しかしできる限り次数を下げていく方針でこれからの話をしていこう。

例として、1x23x4を変形していってみよう。まず、分母のx23x4は因数分解ができて、 (8)x23x4=(x+1)(x4) また元の式は、 1x23x4=15(x+1)(x4)(x+1)(x4)(9)=15(1x41x+1) かなり突然な話ではあるが、分母の次数を下げることができた。一般論を見ていこう。有理式A(x)B(x)があって、B(x)=C(x)D(x)と因数分解することができたとしよう。このとき、 (10)A(x)B(x)=K(x)C(x)+L(x)D(x) と分解できる。ただしA(x)の次数はB(x)のものよりも小さく、C(x)D(x)=B(x)であるとし、K(x)L(x)A(x)=K(x)D(x)+L(x)C(x)の関係から求める。このときK(x)L(x)の次数はC(x)D(x)のものよりも小さくなる。先ほどの例を使って実際に計算してみよう。 1x23x4=1(x+1)(x4) 1x23x4=ax4+bx+1 より、 1x23x4=(a+b)x+a4b(x4)(x+1) となる。両辺を見比べて、 {a+b=0a4b=1 これを解くと、 a=15b=15 このような操作を部分分数分解と呼ぶ。

これで分母の次数の下げ方を知ることが出来たが、これですべての有理式を部分分数分解することができるだろうか。では次の式はどうだろう。 3x(x1)(x+2)2 この式の分母には整式の2乗が含まれている。この場合は前と少し異なる方法を取る必要がある。ではやっていこう。 3x(x1)(x+2)2=ax1+bx+2+c(x+2)2 と置いてやってやるとうまくいく。ここからは前と同様に係数a,b,cを定めてやれば良い。実際にやってみると、 3x(x1)(x+2)2=(a+b)x2+(4a+b+c)x+4a2bc(x1)(x+2)2 両辺を見比べて、 {a+b=04a+b+c=34a2bc=0 これを解くと、 a=13b=13c=2 このように求めることができる。今は2乗の場合だったが3乗、4乗の場合も同じようにすれば良い。

指数と指数法則

無理関数について扱っていく前に指数について確認しておこう。指数とはa233なんかのように文字や数の肩について、自然数の場合は指数がついている文字、数を指数の数だけ掛けるという意味だった。さて、いちいち指数がついている数と呼ぶのは面倒くさいのでこれからはと呼ぶことにしよう。a2の場合は底がa、指数が2である。

指数について成り立つ法則について考えよう。例えばn,mを自然数として、an×amはどうなるだろうか。それぞれan回かける、am回かけるという意味である。これを書き下すと、 an×am=a××an×a××am この右辺はすなわちan+m回掛けるということに他ならない。従って、 (11)an×am=an+m が成り立つ。

次にan/amはどうだろうか。n>mとしておくと、 anam=a××ana××am 同じ文字であるので約分することができるので、 (12)anam=anm

ここで疑問なのはnmのときはどうなるのだろうか。まずn=mのときを見てみよう。(12)の左辺は分母分子が同じであるので約分できて1となる。一方右辺はnm=0であるためa0である。従って、 (13)a0=1 と意味付けることができる。ちなみにa0のときには問題ないのだが、a=0のときにどのような値を取るのかは人による。

次にn<mのときはどうだろうか。ここではわかりやすくするためにn=0,m0の時を考えよう。このとき(12)は、 (14)1am=am これによって指数が負のときにも意味をもたせることが出来た。

次に(an)mはどうなるだろうか。これも書き下してみるとよく分かる。 (an)m=an××anm(15)=anm となるのがわかるだろう。

今までは整数の範囲で指数を扱ってきたが、指数が有理数の場合はどのような意味と捉えることができるだろうか。有理数は整数pq0を使って、pqと表せる。では指数が有理数である意味を考えてみよう。a1を考える。1はある数p0を用いてppと表せる。先に扱った(15)を使って、 a1=app=(a1p)p ここでa1pのように有理数の指数が登場した。これをp乗するとaになっている。このような数のことをaのp乗根と呼ぶ。

最後に、指数が無理数だった場合はどう定義すればよいだろうか。この項目の理解には微積分の項で説明する数列極限の知識が必要になってくるため、ここは読み飛ばすか先にその項目を見てきてほしい。さて、話を戻して無理数の指数について考えてみよう。この定義は、ある無理数tに収束するような有理数の列{tn}を考え、atat=limnatn と定義することにする。あくまでよく定義された有理数の指数の極限を取ったという考え方だ。

また、指数が整数の場合は底の制限はないが、指数が整数以外のときには底は0以上でなくてはならないことにも気をつけてもらいたい。

べき関数

さて、ここまでで指数について説明してきた。そこで一般に次のような関数が考えられる。αを実数として、 f(x)=xα αが正の整数のときは多項式関数。負の整数のときは有理関数となる。ではそれ以外の場合はどうなるだろうか。先程の説明にもあったように、指数が整数以外は底が0以上の場合に限って定義されるのであった。そのため x0 の場合 f(x) は定義出来て、べき関数と呼ぶ。